また現代アートのコレクターでもあるご夫婦からは、アートと住まうことを問われた。
改修前の間取りは小さく3つの部屋に分節されていて、どの部屋も少しだけ閉塞感があった。この2DKの間取りを、大きな居間兼仕事部屋と小さな寝室という2つの部屋へ変更した。
既存躯体の天井面、壁面から飛び出ている柱梁、マンション共用部分の黒い窓枠、露出しているカーテンレール、素材の切り替わりが目立つ巾木といった、‘家っぽさ’を印象付ける要素が表にでないように仕上げていくことで、アートが生活感に埋もれ過ぎてしまわないような空気感や、執筆活動の集中力を妨げない適度な緊張感を目指していった。
凹凸の出ない空間へと整えることで、途切れの無いコーニス照明を作り出す。この分節のない伸びのある光で空間を大らかに包み込むことで、居住空間としての温かみも共存させたいと考えた。
寝室は白く無機質な空間とは対照的に、自然素材の風合いをより感じられるよう、柾目と板目を混ぜ合わせたナラの木で全体を包み込んだ。
身体が常に木を近くで感じることのできるこの寝室は、小ささが故の特別な心地良さが生まれている。
敷地 /東京都 神泉
主要用途 / 住宅
延床面積 / 約 45 m2
施工 / 内田晃晴 / 有限会社田工房
写真 / 堀越圭晋 / エスエス